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 振られたな、かなりバッサリと。

 こちらの様子を気遣っているものの、瞳に迷いのなかったアカリを思い出し、僕は一つ息を吐く。
ひんやりとした秋風を受けながらバルコニーの手すりに掴まり、少し身を乗り出した。
この胸に燻る未練が夜の闇に溶けるように、と願いながら。

「────おや?先客かい?」

 そう言って、僕の横に並んだのはレーヴェン殿下だった。
その隣には、マユリも居る。
どうやら、休憩がてら僕の様子を見に来たらしい。

「白々しいですよ、殿下」

「やっぱり、ニクスにはバレちゃうか」

「バルコニーの前で出てくるタイミングを見計らっていたのは、気づいていましたからね」

「おっと。それなら、そうと早く言ってよ。一生懸命セリフを考えていた私が、馬鹿みたいじゃないか」

 やれやれと肩を竦め、レーヴェン殿下は『酷いな』と零す。
いつもより口数の多い彼を前に、僕は前髪を掻き上げた。