「これは私のワガママかもしれませんが、互いに助け合える関係が良かったんです。だって、二人で決めた道なのに責任を取るのは片方だけなんて……不公平でしょう?何より、『朱里()は何も出来ない子だ』と言われているようで少し悲しかったんです」

 『私だって同じものを背負いたいのに』と述べると、兄は強く目を瞑った。

「そう、か……僕は愛する人の負担を減らしてやるのが、愛情だと思っていた。でも、お前は違うんだな……」

 『選択を間違えた』と嘆く兄に、私は小さく首を横に振る。
だって、愛に正解はないから。
ただ、お互いの価値観が……愛し方が合わなかっただけ。
きっと、彼の愛もある意味では正しいんだと思う。

「ごめんなさい、ニクス様」

 『貴方の気持ちには応えられない』と正式に断りを入れると、彼は暫く沈黙した。
失恋の痛みを堪えるように……そして涙を流さぬように上を向き、唇を噛み締める。
悔しい気持ちを吐き出すように『くそっ……』と小声で呟き、兄は大きく深呼吸した。
かと思えば、ようやく目を開けてこちらを見る。