「────最後(・・)くらい、僕を見ろ」

 どこか拗ねたような口調でそう言い、兄はじっとこちらを見つめた。
今にも泣きそうな表情を浮かべる彼の前で、私は瞬きを繰り返す。

「最後……?」

「ああ。だって────気づいたんだろう?自分の気持ちに」

「!!」

 ハッと息を呑む私は、兄の観察眼と勘の鋭さに瞠目した。
と同時に、『不機嫌だった理由はソレか』と悟る。

 お兄様は本当に誰よりも、私のことを理解してらっしゃる。
一目で心境の変化を見抜く程度には。

 『敵わないわね』と内心苦笑する中、兄はクシャリと顔を歪めた。

「……何で僕じゃダメなんだ」

 独り言に近い声色で吐き出し、兄は縋るような目をこちらに向ける。

「やっぱり、兄だからか……?」

「いいえ、違います」

 迷わず首を横に振り、私はスッと目を細めた。
どう伝えようか悩みつつ、クルリと優雅にターンする。