「僕ならリディアを完璧にエスコート出来るし、うるさい外野を黙らせることも出来るぞ」

 求婚やダンスの誘いのことを言っているのか、兄は『全部対処してやる』と断言した。
こういうところは以前と同じで、私に甘い。というか、過保護だ。

「いや、ちょっと待て!俺だって、リディアをちゃんとエスコート出来る!」

 慌てて私の腕を引き、リエート卿は自分の存在をアピールする。

「今、母上に頼んでエスコートを猛勉強しているんだ!ニクスと比べると、やっぱりまだまだ未熟だけど、精一杯頑張るから!俺とパーティーに参加してくれ!」

 これでもかというほど赤面しながらも、リエート卿は何とか自分の想いを伝えてきた。
『くそ……もっとスマートに決めるつもりだったのに』とボヤく彼を前に、私は頬を緩める。
なんだか、気が抜けてしまって。

 年相応に振る舞うリエート卿を見ていると、『焦らなくていいんだ』って思えるわ。凄くホッとする。

 『居心地がいい』と考えつつ、私は視線を上げた。

「じゃあ、今回のエスコートは────リエート卿にお願いします」