「僕はもう遠慮しないと決めたんだ。全力で落としに行く」

 『手加減なんてしない』と言い切り、兄は髪に軽くキスした。
あまりにも色っぽい動作に、私はもちろんリエート卿まで赤くなる。
────どこか、おままごとのように感じていた恋愛が熱を帯びる現実へ変わった瞬間だった。

「ぁ……えっと……その……」

 なんと返せばいいのか分からず戸惑っていると、兄は柔和な笑みを浮かべる。

「ちゃんと意識してくれているんだな。安心した」

 月の瞳に喜びを滲ませ、兄はスルンと梳かすように髪を離した。
かと思えば、リエート卿を横へ押しやって私の前に立つ。

「それで、戦勝パーティーのパートナーはどうする?」

 強制や成り行きではなく私自身に選ばせようと、決断を委ねてきた。
こちらはまだかなり混乱しているというのに。
『この怒涛の攻めは卑怯だわ……』と考える私を前に、兄はスッと目を細める。