お兄様の……ニクス様の言動の変化を感じ取る度、『ああ、真剣なんだな』と実感する。
おかげで少しずつだけど、兄という先入観(前提)がなくなってきたと思う。

 もう手を引っ張って歩いてくれる兄ではなく、横に並んで道を歩く男女なんだと感じながら、私は唇に力を入れる。
『こ、こういう時ってどう反応すれば……?』と戸惑い、目を回した。
今までにない展開だったので、つい動揺してしまって。

「え、えっと……」

「ちょーっと待った!」

 堪らずといった様子で、リエート卿は声を上げると私達の間に割って入った。
『おい、リエート』と咎める兄になど目もくれず、こちらへ向き直る。

「ニクスに先を越されちまったけど、俺もリディアとパーティーに参加したい。エスコートさせてほしい」

 真剣味を帯びた瞳でこちらを見つめ、リエート卿もパートナーを申し込んできた。
緊張のあまり若干表情を強ばらせる彼の横で、兄はムッとしたように眉を顰める。