「ごきげんよう、リエート卿。どうなさいましたか?」

 体ごと彼の方に向けて背筋を伸ばし、私はニッコリと微笑む。
すると、リエート卿は少し頬を赤くした。

「久々だと、緊張するな……」

 独り言のようにそう呟き、リエート卿はガシガシと頭を搔く。
なんだかソワソワして落ち着かない様子の彼は、視線を右往左往させた。
でも、何とか覚悟を決めたのか真っ直ぐにこちらを見据える。

「あ、あのさリディア。来月にある戦勝パーティー、俺と……」

「────リディア」

 リエート卿の言葉を遮り、正面玄関から姿を現したのは兄のニクスだった。
『ここに居たのか』と言って近づいてくる彼は、肘で殴打するようにしてリエート卿を押し退ける。
そして私の前に立つと、素早く跪いた。

「来月にある戦勝パーティーのエスコートは、僕にさせてくれないか?」

 兄としてではなく一人の男性としてパートナーを申し込み、彼はそっと手を差し出す。
以前までの彼なら、身内という立場を前面に出してパートナー役を勝ち取っていたのに。
『ちゃんと切り替えているのね』と瞠目し、私は衝撃を受けた。