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 魔王を討伐してから、ここ一ヶ月。
国籍問わずあらゆる人々が世界を救った英雄の誕生に喜び、毎日お祭り騒ぎだった。
おかげで、私達は一躍有名人である。それも、世界規模で……。

 ここ最近、各国の王族や貴族から色々お誘いを受けているのね。
主に食事会やパーティーの招待状だけど、求婚状もしばしば。
気持ちは嬉しいけど、恋愛方面はめっぽう弱いというか……ダメダメだから、もう少し待ってほしい。

 『まだリエート卿やお兄様の気持ちにも答えられてないし……』と考えつつ、私は一つ息を吐いた。
自分の気持ちを上手く整理出来なくて。
『私は二人のことをどう思っているんだろう?』と自問する中、不意に肩を叩かれる。

「あか……じゃなくて、リディア!今、いいか?」

 そう言って、『よっ!』と片手を上げるのはリエート卿だった。
アントス学園の校舎前だからか、周囲の目を気にして振る舞う彼はこちらを見て明るく笑う。
最近お互い忙しくて会えていなかったため、いつも以上に彼の笑顔が眩しく見えた。