「安心しなよ、ちゃんも君でも出来るから」

 『保証する』と言ってのける彼に、迷いはなく……ようやく、こちらも警戒心を緩める。

 正直、悪くない取り引きだと思う。
もちろん、その分リスクも大きいけど……でも、ずっとここで悶々とした暮らしを送るよりマシだわ。

 気づいてしまった自分の本音を……『消えたい』という願いを今更無視することは出来ず、覚悟を固めた。

「分かりました。そういうことでしたら、取り引きに応じます」

 ────と、宣言した二ヶ月後。
私は男性に教えてもらった方法で憑依と分離を果たし、天に昇った。
が、特殊な方法で死んだからか……それとも、一応肉体は生きているからか、何もない白い空間で待機する羽目に。
『さすがにちょっと退屈だわ』と思いつつ、私はひたすら地上を……自分の体に憑依した者の様子を眺めることしか、出来なかった。