「憑依出来るのは死んだ者だけだから、問題ないよ。迷惑に思うことは有り得ないだろう。むしろ、君に感謝するんじゃないかな?意図せず、第二の人生……それも、公爵令嬢としての生活を手に入れる訳だから」

 『喜びこそすれ、憂うなんて……』と零し、男性はこちらの不安を取り除いた。
『それは……確かに』と納得する私の前で、彼は肘掛けに体重を載せる。

「それで────取り引きに応じてくれる気になったかい?」

「……対価は私のギフト、ですよね」

 決して安くない代償にたじろいでいると、男性は笑みを深めた。

「そうだよ。君からはとても強い神気を感じるから、多分ギフトを複数持っていると思う。それもかなり強力で優秀なものを、ね」

 じっとこちらを見つめ、男性は自身の顎にそっと触れた。

「出来れば、しっかり内容を確認して選びたいけど、まだ洗礼式を受けていないもんね。残念」

 ランダムになることを示唆しながら、男性はチラリとこちらの顔色を窺う。
と同時に、嘆息した。
どうやら、腹を決め兼ねている私に気づいたらしい。