「ど、どうして……?もう家族との確執はないのよ?きっと、皆リディアを歓迎してくれるわ」

 『もう何も心配は要らないんだよ』と諭す私に、リディアはチラリと視線を向けた。
かと思えば、スッと目を細める。

「……ええ、そうね。アカリが全部解決してくれたから、きっと楽しい人生を送れると思うわ」

「なら……」

「でもね、貴方の居ない世界に執着しても意味がないの」

 どことなく柔らかい表情を浮かべながら、リディアはそう言い切った。
────と、ここで魔王との同調を終え、『共鳴』が完成する。
と同時に、妖精結晶のブレスレットが紐を除いて消滅した。
恐らく、効果を使い切ったのだろう。

 嘘……!?こんなタイミングで……!これじゃあ、ギフトの発動維持が……!

 まだリディアに言いたいことや聞きたいことがたくさんあるのに、時間切れを余儀なくされる。
『嗚呼、こんな時に限って……!』と焦りを覚える私の前で、リディアは魔王の手を離した。
かと思えば、結界を解き、こちらに向き直る。

「アカリ、貴方は私の人生において最大の幸福なの」

 タンザナイトの瞳をうんと細め、リディアは優しく私の頬を包み込んだ。