「り、リディア!待って!何を……!?」

 半透明の結界に両手をつき叫ぶと、リディアは顔だけこちらを向いた。
かと思えば、

「泥を被るのは、私一人で充分よ」

 と言い、魔王の手を握る。
どんどん嫌な予感が膨らんでいく私を他所に、リディアは────ギフト『共鳴』を発動させた。

「待って……!ダメ!止めて!」

 『私の代わりになるつもりなんだ!』とようやく気づき、何とか結界を打ち破ろうとする。
だが、しかし……風で切り裂くことも、燃やし尽くすことも出来なかった。
『強度が高すぎる……!』と顔を歪める中、私は呆然としている兄達へ目を向ける。

「お兄様、リエート卿、レーヴェン殿下……!リディアを止めてください!お願いします!」

 縋るような……祈るような気持ちで頼み込むと、兄達はハッとしたように目を剥いた。
と同時に、リディアへ手を伸ばす。
が、のらりくらりと躱され、魔法で突き飛ばされる。
まあ、ちゃんと加減はしているようで三人とも無傷だが。