「……古代魔導か」

 独り言のようにボソッと呟いた兄は、物珍しげにリディアを見つめた。
『早すぎて、聞き取れない……』とボヤく兄に、リエート卿がコテリと首を傾げる。

「古代魔導って、なんだ?」

「大昔にあった魔法だよ。特定の言葉を発するだけで、誰でも発動可能ってやつ」

 『効果内容は多分、僕達の魔法とあまり変わらない』と補足する兄に、リエート卿は目を剥いた。

「えっ?魔力なしでも?」

「ああ。この魔法に魔力は使わないからな」

「マジかよ!超便利じゃん!」

 興奮したように頬を少し赤くして、リエート卿はリディアの口元を凝視する。
────と、ここでリディアの体が大きく揺らぎ、霧を纏って消えた。
かと思えば、棒立ちしていた分身体がピクリと反応を示す。
どうやら、憑依は無事成功したようだ。