魔王の願いを叶えて、世界に平和も戻って一石二鳥だと思っていたけど、そんな簡単な話じゃないのね。

 突きつけられた厳しい現実を受け止め、私は自身の手のひらを眺める。
その際、ふと申し訳なさそうな表情を浮かべる魔王が目に入った。
少なからず、罪悪感を覚えているのだろう。
でも、これだけは譲れなくてじっとこちらの様子を窺っている。
落ち着かない様子で手を握ったり開いたりしている魔王の姿に、私はスッと目を細めた。

 正直、命を狙われたり冷遇されたりするのはとても辛いし、悲しい。
でも────

「────これは私にしか出来ないことですから。知らんふりして、目を背ける訳にはいきません。でも、そうですね……このままだと、グレンジャー公爵家や麻由里さん達にも迷惑を掛けそうだし、一度身の振り方を考えた方が良さそうです」

 攻撃されるのは私だけ、と限らない。
だから、まずはグレンジャー公爵家から籍を抜いて……。