「お前が死んだら魔王も死ぬ、だと……?その話が周りに知られれば、お前はあらゆる勢力から命を狙われる!魔王に恨みを持つ奴が一体、何人居ると思っているんだ!?」

 『世界を敵に回すと言ってもいい!』と力説し、兄は考え直すよう説得してきた。
すると、それに便乗するようにレーヴェンが苦言を呈する。

「恐らく……というか、確実にこれまで通りの生活は送れないよ。もしかしたら、皇帝(私の父)も君を殺そうとするかもしれない……」

「俺達だけの秘密に出来れば、いいが……魔王関連となると、黙っている訳にはいかねぇーもんな……」

 悩ましげに眉を顰め、リエート卿は乱暴に頭を搔いた。
『どう頑張っても、丸く収まりそうにはねぇーな』と語る彼の傍で、麻由里さんも難しそうな顔をする。

「それにたとえ、処刑や暗殺の難から逃れられたとしても……色んな人に白い目で見られるのは、必至。そんな冷遇に耐えられるの?」

 心配そうにこちらを見つめ、麻由里さんは強く手を握り締めた。
『私はそんなの嫌だよ……』と嘆く彼女を前に、私はそっと眉尻を下げる。
と同時に、己の認識の甘さを痛感した。