チラリと黒髪の男性に視線を向け、私は優しく微笑んだ。

「貴方は永遠というものが、恐ろしいだけですよね?なら、私が終わりを決めて差し上げます」

「!」

「人間の寿命は長くても、百年程度。決して短い時間ではありませんが、私のために……そして、貴方自身のために静かな余生を過ごしてみてはどうですか?」

 『終わりがあるから、もう不安はないでしょう』と主張すると、魔王は大きく目を見開く。
夜の瞳に期待と安堵を滲ませ、強く手を握り締めた。

「それなら……」

「────ダメだ!」

 魔王の言葉を遮るようにして声を上げた兄は、こちらに向き直るなりガシッと肩を掴む。
半ば怒ったような表情を浮かべながら。