大抵の人間なら喜ぶだろう不老不死という能力が、どうしても受け入れられないようで……魔王は小さく(かぶり)を振った。
ゴールのない迷路に放り込まれたような心境なのか、尚も拒絶反応を示す。

「それに僕は数え切れない悪行を重ねてきた……人間達は僕が存在するだけで、恐怖を感じる筈……」

「そうだね。だから、とりあえず世界滅亡は諦めてくれるかな?」

 勢いを削がれた魔王に対し、レーヴェン殿下は間髪容れずに不可侵の確約を求めた。

「君の持つギフトの『等価交換』とやらで、きっちり契約を交わしたいんだけど」

 ここぞとばかりに攻めるレーヴェン殿下に対し、魔王は顔色を曇らせる。

「……僕を殺せば、全て丸く収まる」

「その方法がないから、ここまで拗れたんだろう」

 私と魔王の間に割って入り、兄は氷の矢を複数顕現させた。
まだ魔王が世界の滅亡を諦めていないため、警戒してしまったのだろう。