「あれでは、まるで────倒されるのを待っているようだ」

 怪訝そうな表情で違和感を吐き出し、レーヴェン殿下は『何がどうなっているんだ?』と思い悩む。
────と、ここでリエート卿が急に後ろを振り返った。

「おい……!猫!」

 言葉少なに危険を知らせ、リエート卿は剣を抜く。
が、時すでを遅し……。
学園祭で見たあの猫さんが、

「あっ……!」

 麻由里さんの聖なる杖を強奪してしまった。
それも、一瞬で。
『どんなに可愛い見た目でも、魔物は魔物だものね』と考えつつ、私は急いで土魔法を放つ。
猫さんの足元だけ土を盛り上げ凸凹にし、体勢を崩そうとしたのだ。
でも、背中に生えた翼を駆使して飛来し、躱されてしまう。
『私の魔法発動スピードじゃ、捉え切れない!』と焦る中、レーヴェン殿下が蔓を生成した。
そして、猫さんの足を拘束しようとする────が、途中で矛先を変えた。