「開戦直前だというのに、呑気だな」

 魔法使いのようなとんがり帽子を被り、短めの杖を手に持つ兄は紺色のローブに身を包んでいる。
いずれも魔法の効果を跳ね上げる代物で、魔導師の兄にピッタリ。
また、耳からぶら下げているサファイアのイヤリングには冷気耐性がついており、寒さを和らげる効果があった。

「でも、緊張し過ぎてぶっ倒れるよりかはマシじゃね?」

 白のプレートに身を包むリエート卿は、『こんくらいマイペースで言いだろ』と述べる。
その手には、ドラゴンの鱗で作ったと言われる銀の盾が握られていた。
他にも木彫りで出来たお守りやら、タッセルのようなアクセサリーやら身につけている。
どれも防御力を飛躍的に上昇させるもので、タンクの役割を担ってもらうリエート卿に最適のアイテムだった。

 一応剣も持っているが、基本は使わない方針。使うとしても、恐らくギフトの聖剣になるだろう。
だって、それだけ相手に接近を許しているということはかなりピンチな状況になるから。
出し惜しみなんて、出来ない。