「でもね、私にだって意地はあるの。自分の出来ることは精一杯やろう、という意地がね。それで家族や友達の助けになるなら、尚更」

 腰に当てた手を下ろしつつ、私は自信ありげに笑う。

「傍から見れば利己的な女に映るだろうけど、それで構わない。それが私だもん」

 いくら上品に取り繕ったって変わらない自分の(さが)を示し、一歩後ろへ下がった。
呆然とした様子で固まる聖獣を見つめ、手に持ったもの(・・・・・・・)を握り締める。

「悪いけど、どれだけ諦めさせようとしても無駄だから。こっちはもう悩みに悩みまくって、腹を決めているの。今更外野に何を言われたって、揺るがないよ」

「……強情なやつだ」

「そう?身の程を弁えていて、実に謙虚だと思うけど?」

「いや、どこが……」

 ゲンナリしたように溜め息を零し、聖獣は(かぶり)を振る。

「とりあえず、君の気持ちは分かった。じゃあ、こうしよう。僕の与えた試練を突破出来たら、聖なる杖を……」

「────あっ、それならもう持っているから大丈夫」

 先程拝借した白い杖を背中の後ろで振り、私はニッコリと微笑む。
と同時に、全力疾走で来た道を引き返した。