「目的は分かっている。聖なる杖の受け渡しだろう?」

「話が早くて、助かります」

 深く被ったフードを取り払い、私はおもむろに両手を差し出す。

「早速で申し訳ありませんが、聖なる杖を渡してください」

 『外で人を待たせているので』と言い、私は譲渡を急かした。
が、聖獣はピクリとも動かない。

「渡さない、と言ったら?」

「それは不可能な筈です。貴方は『光の乙女』の所持者が来たら、聖なる杖を渡さないといけない制約を受けているので」

「ほう?それは神と僕しか知らないことなのだが……どうして、知っているんだ?」

 公式ファンブックより仕入れた情報に、聖獣は警戒心を抱く。
『こいつ、平凡そうに見えて案外やり手か?』という本音を滲ませて。

 ゲームのヒロインには、懐きまくっていたくせに。