「で、でも私達は兄妹で……中身は他人と言えど、一生を共にするのは困難じゃ……?」

「いや、大丈夫だ。僕達は異母兄弟だから、結婚しても問題ない。周囲に白い目で見られる可能性はあるかもしれないが……ちゃんと守る。だから、僕を男として見てくれ……『兄妹だから』と選択肢から外されるのは、御免だ」

 『せめて、チャンスが欲しい』と強請(ねだ)り、兄は僅かに顔を歪めた。
今にも泣きそうな表情を浮かべる彼を前に、私はギュッと胸元を握り締める。

 正直凄く混乱しているけど、お兄様はきっとかなり勇気を振り絞って打ち明けてくれた筈。
なら、それに応えたい。

「分かりました。お兄様のこと、ちゃんと考えてみます」

 兄妹という意識を捨てるのは容易じゃないが、それでも一人の人間として彼の気持ちに向き合おうと決心した。
真っ直ぐに前を見据える私の前で、兄は表情を和らげる。

「ああ、いい返事を期待している」

 そう言うが早いか、兄は私の右手を持ち上げ────軽く口付けた。