そのおかげか、退屈することなくあっという間に馬車へ辿り着き、家族へ引き渡される。
『じゃあ、また後でな!』と告げる彼に頷き、私は家族と共に皇城を出た。
そして、昼食のために予約したと思われるレストランまで行き、顔を突き合わせる。
個室のため逃げ場はなく空気も重いが、思ったより落ち着いていた。

 リエート卿に元気づけてもらったおかげかしら?

 まだ彼の温もりが残っている左手を見つめ、私はスッと目を細める。
『リエート卿には感謝しないと』と温かい気持ちでいっぱいになる中、両親はふと顔を上げた。
と同時に、食事する手を止める。

「リディア……の憑依者、話をする前にまず名前を聞いてもいいか?」

「もちろん、嫌なら構わないのだけど……」

 いつまでも『リディアの憑依者』と呼ぶのは憚られるのか、そう申し出る。
どことなく申し訳なそうな表情を浮かべる二人に、私は内心首を傾げた。
『もっと手荒な対応をされるかと思ったのに』と思案しつつ、カトラリーをテーブルに置く。