『前世の私を知りたい』と捉えられる一言に、ハッと息を呑む。
と同時に、少しだけ胸が高鳴った。

「あ、朱里です……ファミリーネームは山下」

「アカリ・ヤマシタか!いい名前だな!って、俺には響きくらいしか分かんねぇーけど!でも、お前の名前だって思うと特別に思えるんだ!」

 ニカッと歯を見せて笑い、リエート卿は握った手に力を込める。

「じゃあ、これからは『アカリ』って呼んでもいいか?」

「えっと、プライベートの時であれば」

「おう!それはもちろん!」

 『公式の場では、“リディア”って呼ぶ!』と断言し、リエート卿は少しばかり頬を赤くした。

「なんか、秘密の愛称みたいでいいな!」

 サンストーンの瞳をうんと細め、リエート卿は喜びを露わにする。
呼び方を使い分けるなんて面倒な筈なのに、彼はポジティブに捉えてくれていた。