「少し話があるんだ。いいか?」

「は、はい。私は構いませんけど……」

 チラリと家族の顔色を窺うと、父が小さく首を縦に振った。

「好きにしなさい。我々は先に馬車まで行く」

 別行動を取るための申し出だと気づいていたのか、父は気を利かせてさっさと退室した。
それに、母や兄も随行する。
少し遅れて、レーヴェン殿下とルーシーさんも部屋を出ていった。
二人きりになった室内で、リエート卿はこちらを見て笑う。

「そんじゃ、俺らも行こうぜ。あんま遅くなると、ニクスに文句を言われそうだし」

 『歩きながら話そう』と主張する彼に、私はコクリと頷いた。
と同時に、手を重ねる。

 憑依の件を明かしてから、リエート卿と二人きりになるのは初めてね。