「すまないが、今日の話し合いはここまでだ。各自帰路につくように」

 『あっ、昼食を希望する場合は侍従に言ってくれ』と付け足し、ノクターン皇帝陛下は扉へ足を向けた。
いそいそと部屋を出ていく彼に、私達は慌ててお辞儀する。
間もなくして、パタンと閉まる扉の音が鼓膜を揺らした。

「さて、私は真っ直ぐ学園に戻るつもりだが……君達はどうする?」

 『良かったら、乗せていくよ』と申し出るレーヴェン殿下に、ルーシーさんが真っ先に反応を示す。

「私もこのまま学園に帰ります」

「んじゃ、俺も」

 『どうせ、やることねぇーし』と言い、リエート卿は頭の後ろで腕を組んだ。
恐らく、レーヴェン殿下とルーシーさんを二人きりにしない配慮もあるのだろう。
年頃の男女が相乗りなんて、誤解を生みかねないから。
『なら、私も乗った方がより安全よね』と思案する中、父がチラリとこちらに視線を向けた。