「また、リエートルートの場合は────初恋の人を取られたくなかったから……ですかね?」

「は、初恋の人……!?」

 反射的に聞き返すリエート卿は、僅かに身を乗り出した。
ほんのり頬を赤く染める彼の前で、ルーシーさんはコクリと頷く。

「はい。これは公式ファンブックに載っていた情報なんですが、本物のリディアの初恋は七歳の頃……自分の誕生日パーティーで、唯一親切にしてくれたリエートを好きになったらしいです。なので、恋敵とも言えるヒロインに意地悪したんじゃないでしょうか?」

 思ったより普通の……実に女の子らしい動機に、私は少し驚く。
だって、私の中のリディアは理知的で……大人っぽい印象だったから。
『ちゃんと女の子なんだな』と実感し、私は頬を緩めた。

 ヒロインへの意地悪はいただけないけど、その感情自体はとても素敵に思える。