「まず、これだけは宣言しておこう────貴殿に司法による裁きを与えることは出来ない」

「!?」

「正直、これでは証拠不十分だからね。現状、今の君が本物のリディア嬢じゃないことを証明出来る手立てはない訳だし。何より、この文面を見る限り君は巻き込まれた被害者だ。それをどうして、責められる?」

 『お門違いもいいところだ』と肩を竦め、ノクターン皇帝陛下は少しばかり場の空気を軽くしてくれた。
ホッとしたように息を吐き出すルーシーさんやレーヴェン殿下を他所に、彼は肩の力を抜く。

「とにかく、私から何か言うことはない。あとは当人達次第だ」

 『ここから先は気持ちの問題だ』と言ってのけ、ノクターン皇帝陛下は黙り込む両親を見つめた。
思い詰めたような表情で手紙を眺める彼らの姿に、一つ息を吐く。
────と、ここでルーシーさんが手を挙げた。