「先に結論から、申し上げます。私は────リディア・ルース・グレンジャーではありません」

 自身の胸元に手を添え、私はハッキリと断言した。
すると、両親はハッと息を呑み……苦しげに顔を歪める。
『そうじゃないと信じたかった』と狼狽える彼らを前に、ノクターン皇帝陛下はそっと眉尻を下げた。
何となく予想はしていたのか、彼にあまり驚いた様子はない。
ただ、悲しそうに……どこか哀れむように両親を見つめているだけ。

「信じられないかもしれませんが、私は元々別の世界で暮らしておりました。でも、ある日命を落とし、気づいたら当時六歳のリディアになっていたのです」

 俄かには信じ難い話を語り、母の手元にある箱へ目を向けた。

「その証拠となるかどうかは分かりませんが、本物のリディアより頂いた手紙を持っています」

「「「!?」」」

 ガバッと勢いよく顔を上げ、周囲の者達はこちらを凝視した。
『本当か!?』と視線だけで訴え掛けてくる彼らを前に、私は小さく頷く。