「おい、待て。どこに行く?」

 今にも生徒会室を飛び出しそうな俺に、ニクスは堪らず声を掛けた。
怪訝そうな表情を浮かべる幼馴染みの前で、俺はいそいそと後片付けを行う。

「リディアのところ」

「はっ?」

「こういうのは、早めに伝えた方がいいだろ。ずっと不安にさせるのも、可哀想だし」

「いや、何時だと思っている?多分、もう寮に居るぞ」

 『まさか、忍び込むつもりか?』と眉を顰め、ニクスはこちらを睨みつける。
もう寝ている可能性やシャワー中の可能性を危惧しているのか、いつになく険しい顔つきだった。
『行かせてなるものか』と殺気立つ幼馴染みを前に、俺も少し冷静になる。

「……今から会いに行くのは、さすがに不味いか。寮には、他のやつも居るだろうし」

「ああ、一歩間違えれば変質者だぞ」

 『変態クソ野郎の烙印を押されたいのか』と脅すニクスに、俺は本気で危機感を覚えた。
血の気が引いていく感覚を覚えながら身震いし、大人しく着席する。