「はぁ……今回の件はもういいです。許します」

「ありがとう」

「いえ」

 『過ぎたことはもうしょうがないし』と肩を竦め、ルーシー嬢は嘆息する。
やれやれと言わんばかりの態度を取る彼女の傍で、リディア嬢が不意に顔を上げた。

「あの、私からも一つだけいいですか?」

 おずおずといった様子で片手を挙げ、リディア嬢はこちらの反応を窺う。
どことなく不安そうな彼女を前に、私はニッコリと微笑んだ。

「もちろん、構わないよ。言ってごらん」

 出来るだけ優しく話の先を促すと、リディア嬢はホッとしたように息を吐く。

「えっと、レーヴェン殿下はその……偽物の私をどう思いますか?」

 そっと自身の胸元に手を添え、リディア嬢は曖昧に笑った。
きっと、どんな顔をすればいいのか分からないのだろう。