「あっ……じゃあ、各クラスの出し物をもう一度回るのはどうですか?」

「いや、絶対に時間足りないでしょ」

 『終わらないって』と指摘するルーシーさんに、私はぐうの音も出なかった。
確かにちょっと無理があるな、と思ったから。

「まあ、ここでグダグダ考えていても始まらねぇーし、一旦外に出ようぜ」

 『適当に辺りを散策しながら考えよう』と提案し、リエート卿は立ち上がった。
『ほら、行くぞ』と言う彼に急き立てられ、私達も席を立つ。
────と、ここで動物の鳴き声が耳を掠めた。

「あら、こんなところに猫さんが」

 どこから入ってきたのか……窓の縁に立つモフモフを見つけ、私は驚く。
『まさか、三階までジャンプしてきたのか?』なんて思いながら、傍に近寄った。
赤ずきんちゃんのような頭巾を被る猫に手を伸ばし、そっと抱き上げる。

「誰かのペットでしょうか?」

「服を着ているってことは、そうじゃない?」

「そもそも、アントス学園に野良猫は居ないしな」

「全く……飼い主には困ったものだ。ペットの同伴は全てお断りだと、事前に通達している筈なのに」

 『見つけ出して叱らないと』と憤慨し、兄は小さく(かぶり)を振った。
規則を破った挙句、ペットを野放しにする飼い主に呆れ返っているのだろう。