呆れるほど優しいあの子を思い浮かべ、私はなんだか切ない気持ちになる。
『もっと欲張りになっても、バチは当たらないのに』と思ってしまって。
本物のリディアほど過激になれとまでは言わないが、もう少し我を通したっていい筈だ。
『せめて、何かに執着してよ』と嘆息する中、レーヴェンはアメジストの瞳をスッと細める。

「そして、何よりギフトの分布や選定には────何かしらの意図を……何者かの作為を感じます。だから、私はギフトの複数持ちに法則などないのではないかと考えているのです」

 長年研究されてきたギフトの法則をまさかの一刀両断し、レーヴェンはゆるりと口角を上げた。
かなり思い切った……ある種の開き直りとも言える論文に、観客達は目を剥く。
ざわざわと騒がしくなる彼らの前で、レーヴェンは演説台から身を起こした。

「ギフトとは神から平等に与えられた恩恵(優しさ)であり、苦難を迎える者達への慈悲(慰め)なのかもしれません」

 ちょっと抽象的ではあるものの、締めの言葉である結論を述べ、一礼。
『ご清聴ありがとうございました』と述べるレーヴェンに、観客達は盛大な拍手を送った。
さすがに彼の論文を受け入れられている者はまだ少ないが、『面白い仮説だ』と感じている者は案外多い。
まあ、頭の固い学者なんかは『所詮、子供の妄想だな』と吐き捨てているが。
でも、ただ一人……妖精のフィリアだけは

「あら、結構いい線いっているわね」

 と、感心していた。