「────いいわよ、あげても」

「えっ……!?」

 半分諦めていたところにまさかのOKを貰い、私は反射的に顔を上げた。
すると、穏やかに微笑むフィリアの姿が目に入る。

「ただし────今日一日、私と学園祭を回ること。それが妖精結晶を渡す条件」

 『正門までの案内じゃ、割に合わないわ』と言い、フィリアは要求を変えてきた。
まあ、そんなの誤差でしかないが。
だって、こっちは今日のためにありとあらゆる人の誘いを断ってきたのだから。
四日間全部を捧げるくらいの気概だったため、一日くらい屁でもない。
むしろ、お釣りが来るくらいだ。

「あ、ありがとうございます!喜んでご案内致します!」

「ふふふっ。よろしくね」

 口元に手を当て上品に笑うフィリアは、そっと私の手を取った。

「じゃあ、まずはどこから案内してもらおうかしら?」

「この時間帯だと、どこも混んでいると思いますが……個人発表の方なら、まだマシかな?」

 一年生から順番に発表していくシステムのため、初日は注目度が低い。
何故なら、期待の新人を探そうと躍起になる人が少ないから。