『妖精に警戒されたら困るし……』と思いつつ、私はキュッと唇を引き結ぶ。
気を紛らわせるためにリディアとの思い出を思い浮かべ、テクテクと歩き回った。
『ここでチョコを食べながら、女子会したなぁ』と考えていると、

「────もし、そこのお方」

 と、声を掛けられた。
反射的に後ろを振り返る私は、思わず『やった!』と言いそうになる。
だって、そこに居るのは間違いなく────妖精のフィリアだから。
『ゲームの立ち絵とそっくり!』と浮かれつつ、何とか表情を取り繕う。

「はい、何でしょうか?」

 ゲームでヒロインが放ったセリフをそのまま真似て、私は対話に応じた。
すると、フィリアは緩やかに口角を上げる。

「実は道に迷ってしまって、困っているんです。もし、お時間に余裕がありましたら正門まで送っていただきたいのですが」

 白いローブから覗く手を胸元に当て、フィリアは『頼めませんか?』と問う。
ゲームと同様とても礼儀正しい彼女は、黒い帯に隠された目をこちらへ向けた。