珍しいわね。お二人がこんなに白熱というか、夢中になるなんて。
演劇には興味ない、と仰っていたのに。

 過去の発言を思い返しつつ、私は広げた両手をそのまま持ち上げる。

「嗚呼、恨めしい……恨めしい……」

 独り言のようにボソボソ呟き、私は光魔法で雷を演出した。
赤、黒、紫と様々な色を使って。

「外見しか取り柄のないくせに出しゃばる小娘も、私の初恋を奪っておきながら他の女に走る王子も……全て憎い!」

 低く唸るような声でそう言い、私は次の魔法を準備する。
その間、何故か兄とリエート卿から『いいぞ、やっちまえ!』という声援を受けたが……一先ず、スルー。
とにかく、目の前のことに集中しようと思って。

「二人とも仲良く地獄に落ちるがいい!」

 目いっぱい声を張り上げ、私は両手を下ろした。
と同時に、冷気が二人を襲う。

「危ない、姫……!」

 すかさずルーシーさんを庇ったレーヴェン殿下は、冷気に当てられ気絶した。
無論、フリである。
ちなみにあの冷気で、健康を害される心配はない。
『当たったら、ちょっと冷たい』程度。