そっか。お父様達は本来であれば、アイテム収集や四天王の討伐に明け暮れている筈だものね。

「これは頑張らないといけませんね」

 『絶対に失敗出来ない』というプレッシャーを感じながら、私はギュッと手を握り締めた。
すると、ルーシーさんに軽く背中を叩かれる。
『その意気だ』とでも言うように。

「────皆、そろそろ出番だよ。準備して」

 タキシードのような格好で現れたレーヴェン殿下は、僅かに声を張り上げた。
『開演五分前だ』と告げる彼に促され、私達は慌てて初期配置につく。
照明やセットの入れ替えを担当する裏方の方々も、最終チェックに入った。

 ────さあ、いよいよ開演ね。

 手に持った仮面を被り、私はローブの袖に手を隠した。
その刹那、開始の合図であるブザーが鳴り響く。
一瞬にして静まり返る会場を他所に、ステージ(出し物)の幕は開けた。

「むかーしむかし、あるところに美しいお姫様が居ました。見るもの全てを虜にし、動物にさえ好かれるお姫様はとても幸せに暮らしていました」

 ナレーションのセリフに合わせて、ルーシーさんは愛想を振り撒き、ニコニコ笑う。
侍女役や執事役の子と手を繋いでクルリと回り、愛されヒロインを演出した。
そして、打ち合わせ通りヒロイン以外の子達は一旦退場する。