『クラスメイトだから手加減しているみたい』と推測する中、リディアは小さく深呼吸する。
おかげで、少し空気は軽くなった。

「アマンダさん、どうしてルーシーさんに暴力を?」

「そ、それは……えっと……ルーシー嬢にヒロイン役を降りてもらいたくて……」

「何故です?ルーシーさんは誰よりも熱心に練習しているのに」

 『彼女以上に適役は居ないと思いますが』と言い、リディアは怪訝そうに眉を顰める。
『もしや、ヒロイン志望だった?』と頭を捻る彼女の前で、アマンダはフルフルと首を横に振った。

「……り、リディア様にヒロイン役をやってもらいたかったんです」

「私に?」

「はい。だって────」

 そこで一度言葉を切ると、アマンダは僅かに口先を尖らせた。

「────リディア様に悪役は似合いませんもの」

「……えっ?」

 先程までのシリアスな雰囲気から、一変……リディアはショックを受けたような顔で固まる。
『わ、私ってそんなにダメ……?』と落ち込む彼女を他所に、アマンダは

「だって、リディア様はとってもいい方ですもの!誰にでも優しくて、親切で!まさにヒロインにピッタリ!悪役なんて、相応しくありませんわ!世界一、ミスマッチです!」

 と、力説した。
それが更にリディアのHPを削っているとは、露知らず。