「さあ、今からでも身の程を弁えてヒロイン役を降りなさい!それが皆のためよ!」

 ここぞとばかりに畳み掛け、アマンダは私の心をへし折りに掛かる。
『愚鈍な平民の分際で!』と罵る彼女を前に、私はフッと笑みを漏らした。
と同時に、アマンダの手を掴み、

「ぜっっったいにお断り!」

 と、断言する。
そして、耳から彼女の手を引き剥がした。

 ────こっちにだって意地はある。
リディア達にここまで色々よくしてもらって……協力してもらって……信じてもらって、無責任にヒロイン役を放り出すことなんて出来ない。
皆の期待に応えないと。

 痛む耳をそのままに、私はアマンダの目を真っ直ぐ見つめ返す。
自分の中にある迷いを捨て去るように。

「たとえ、不釣り合いでも大役を任された以上やり切る!それが私の流儀よ!」

 『こちとら、もう開き直ってんの!』と心の中で叫びながら、私は口角を上げた。
強気な態度を見せる私の前で、アマンダは一瞬たじろぐ。
まさか、こんなに早く立ち直るとは思わなかったらしい。
『あともうちょっとだったのに』と眉を顰め、悔しそうに歯軋りした。
かと思えば────

「聖女候補だかなんだか知らないけど、平民の分際で調子に乗らないで!」

 ────怒りのままに私の頬を叩こうとする。
それも、扇で。