「ちょっと探してきますわ!」

「ああ、よろしく頼むよ。私は今、手を離せないから。ただ、ルーシー嬢を見つけられなかったとしても五分後には戻ってきておくれ」

 行き違いになっている可能性を考えたのか、レーヴェン殿下は時間制限を設ける。
それに一つ頷き、私は急いで一階のホールを飛び出した。
『ルーシーさんはどこに……?』と思案しつつ、心当たりのある場所を片っ端から探していく。
でも、教室はもちろん普段練習で使っている空き教室にも姿はなかった。

 も、もしかして……どこかで倒れている?
もしくは、前みたいに誘拐されたとか……。

 嫌な予感を覚える私は、不安のあまり泣きそうになる。
『いや、行き違いでもうホールに居るかも』と自分に言い聞かせ、何とか平静を保った。
そろそろ約束の五分になることを考え、私は一旦レーヴェン殿下の元へ戻ろうとする。
────と、ここで複数人の話し声が耳を掠めた。

 ……あら?この声って。

 ピクリと反応を示し、顔を上げる私は声のする方へ足を運ぶ。
もし知り合いなら、ルーシーさんのことを知らないか聞こうと思って。
『聞き込み調査よ』と奮起する中、私は多目的室を覗き込んだ。