「かなり、良くなったよ。リディア嬢のアドバイスのおかげかな?」

 チラリとこちらを見て、レーヴェン殿下は柔らかく微笑む。
『お手柄だね』とでも言うように。

「この調子で、ダンスをマスターしよう」

 ────という発言の元、レーヴェン殿下は時間いっぱい練習に付き合ってくれた。
今日のみならず、次の日も。そのまた次の日も、ずっと。
おかげで、ルーシーさんのダンスや演技は格段に良くなった。
それに比べて、私は全然だけど。

 結局、『悪役で出番も少ないから』って仮面を被ることになったのよね。
これなら、表情は関係ないから。

 『私の演技って、そんなに酷い?』と肩を落としつつ、黒い仮面を被る。
今日は本番で使用するステージを使って、練習することになっているため、一階のホールへ急いだ。
『遅刻厳禁』と脳内で反芻しながら目的地を訪れると、我がクラスの大道具や小道具が目に入る。
もう既にセットの準備を進めているらしい。

 大変。直ぐに手伝わないと。