「まあ、とりあえずそういう訳だからブレスレットの運搬はよろしく」

「それは、はい。もちろん。でも、なんというか……釈然としないです」

 『どうして、ルーシーさんだけ』と不満に思う私に、彼女はスッと目を細めた。
ちょっと嬉しそうに。

「でも、悪いことばかりじゃないよ。このおかげで、学園祭当日の不安は多少和らいでいるし」

 『シナリオの力が働く=イベントが成立する』と捉えているのか、ルーシーさんは鼻歌を歌う。
ちょっと楽観的な気もするが、あまりグチグチ言ってもしょうがないので私は何も言わなかった。
『シナリオの力を阻害する方法を知っている訳じゃないし』と嘆息する中、ルーシーさんは歩を進める。

「ねぇ、あの二人って今どこに……きゃっ!?」

 ふとこちらを振り返ったルーシーさんは、見事階段を踏み外した。
これもシナリオの力によるものなのか、それとも単なるドジなのかは分からないが、とにかくピンチである。