何故、ペンキのことを予期していたのか。これも何かのフラグなのか。

 様々な疑問が脳裏を駆け巡り、私は困惑を露わにする。
『大体、どうしてそんなに冷静なの……?』と戸惑っていると、ルーシーさんは一つ息を吐いた。

「端的に言うと、本来受ける筈だった嫌がらせを事故の一環として受けているの」

「……えっ?」

「ほら、シナリオではヒロイン()いじめられているでしょ?だから、その補填的な?」

 『私も最近、気がついたんだけどね』と述べつつ、ルーシーさんは腕を組む。
と同時に、指先で顎を撫でた。

「これは私個人の見解だけど────イベントやフラグの時期と状況を変えることは出来ても、消滅は出来ないんだと思う。ある程度、シナリオの力は働いているんじゃないかな。少なくとも、私には」

 『貴方は何故か全く影響を受けてないけど』と肩を竦め、苦笑いする。