『きっと、楽しみで仕方ないのね』と微笑ましく思い、私はひたすら静観を決め込む。
だって、公爵令嬢の私が案を出したらみんな遠慮してしまいそうで。
何より、学園祭の知識は前世の……それも、ドラマや漫画から得たものしかない。
そのため、下手に発言出来なかった。

 とりあえず、『メイドカフェ』や『お化け屋敷』がダメなのは何となく分かる。
でも、その他が大丈夫という確信はないのよね。

 などと考えている間に、話し合いは進み────無難に演劇で決定。
内容はよくある恋愛ストーリーだが、配役は凄く豪華だった。
だって、王子役がレーヴェン殿下でその相手役を務めるのがルーシーさんだから。
ちなみに私は二人の仲を引き裂く悪女役。
と言っても、出番は本当に少ないけど。

 ルーシーさんの強い希望というか、反対で減らされちゃったのよね。
『リディアに悪役は務まらないから』って。
これでも、一応悪役令嬢なのに。

 『私以上に適役は居ないと思うけど』と頭を捻る中、鐘が鳴った。

「そろそろ、時間ですね。では、各々準備に励むように」