「えー……突然ですが、ジャスパー・ロニー・アントス学園長は持病の悪化により辞任する運びとなりました」

 『田舎で静養するとのことです』と言い、担任のジャクソン先生はカチャリと眼鏡を押し上げる。
『えっ?いきなり?』とざわめく生徒達を一瞥し、黒板に向かい合った。
その際、後ろで結んでいた茶髪がサラリと揺れる。

「私自身、今朝知らされたばかりでまだ動揺していますが、気持ちを切り替えていきましょう」

 『いつまでも引き摺ってはいけません』と述べつつ、黒板に何やら書き込んでいく。
その文章が完成に近づけば近づくほど、私達の関心は高まっていった。
だって、それは待ちに待った────

「既にご存知の方も居るでしょうが、これから学園最大の催しがあります。例年通り、準備期間は一ヶ月。個人発表・団体発表ともに手を抜かず、完璧にやり切ってください」

 ────学園祭だから。
『諸先輩方の歴史や伝統を汚さぬように』と言い聞かせるジャクソン先生に、私達はコクコクと頷いた。
これから、始まる非日常を想像しながら。