『まだここで捕まる訳には……!』と懇願し、学園長は頭を下げる。
なりふり構わずといった様子で頼み込んでくる彼に、僕は一切心を動かされなかった。
隣に立つリディアはちょっと複雑そうだが、事が事だけに『はい、いいですよ』とはならない。
ただただ、気の毒そうに学園長を見つめているだけ。

「魔王に力を貸している者の願いなど、聞くつもりはない。諦めろ」

「そ、そこを何とかお願いします……!」

 尚も食い下がってくる学園長に、僕は思わず溜め息を零す。
『これが大人のすることか』と思うと、あまりにも情けなくて。

 仮にも、学園を管理する一族の長だろう?
何故、ここまで落ちぶれてしまったんだ?

 『それでは、先祖に顔向け出来ないぞ』と呆れながら、魔術を使用した。
どうせなら、リディアの残した魔法の残骸────もとい氷を利用しようと思って。
『せっかく、妹が頑張ったんだから』と口角を上げ、僕は全て冷気に変える。
おかげで、学園長の足元は真っ白だ。