「ジャスパー・ロニー・アントス、お前の悪事もここまでだ」

「っ……!」

「聞きたいこともあるから、今すぐ殺す真似はしないが……僕の妹に牙を向けたんだ、それなりの対価は支払ってもらおう」

 『無傷(タダ)で済むと思うな』と主張し、僕は学園長とアガレスの周囲だけ思い切り温度を下げた。
一歩間違えれば、凍死してしまうほどに。

 僕の妹は争いを好まない性格なんだ。
きっと、無理をして戦っていたに違いない。

 リディアの精神状態を案じ、僕は『絶対に許さない』と憤る。
────と、ここで学園長はゲートを開いた。
恐らく、『空間支配』による瞬間移動を使えないから代わりに転移魔法で逃げるつもりなんだろう。

「アガレス様、お手を!」

 『早く!』と急かす学園長は、必死に手を伸ばした。
魔王との約束だからか、アガレスも連れていくつもりらしい。
『一人なら、まだ逃げられたかもしれないのに』と思いつつ、僕は────

「無駄な悪足掻きだったな」

 ────ゲートを氷で囲んだ。
要するに、通過出来ないよう壁を使ったのである。