『人の気配も感じ取れないんだよな』と述べる彼の横で、レーヴェン殿下は難しい顔をする。

「リディア嬢が居るのは、確実だと思うけど……ちょっと妙だね」

 『何かがおかしい』と警戒心を露わにし、レーヴェン殿下はスッと目を細めた。
────と、ここで扉を調べていたリエートが身を起こす。

「まあ、とりあえず中に入ってみようぜ」

「開くのか?」

「いや?鍵かかっている」

 ドアノブを掴んで押したり引いたりするリエートは、『ほら、開かない』と示す。
『じゃあ、どうやって中に入るんだ?』という話だが……そんなの一つに決まっていた。

「そうか────なら、蹴破れ」

「おう!」

 『待ってました』と言わんばかりに大きく頷き、リエートは思い切り扉を蹴り飛ばす。
さすがは筋肉バカとでも言うべきか……鉄製の扉をたった一撃で破壊した。
ガタンッと音を立てて向こう側に倒れるソレを前に、レーヴェン殿下は手を叩く。
その瞬間、ここら一帯が一気に明るくなり────中の様子を露わにした。

「「「「リディア(嬢)……!」」」」