人見知りの子供のような反応に、私はついつい笑みを零す。

「いえいえ。友達を助けるのは当然のことですので、どうかお気になさらず」

 胸の前で手を振り『お礼なんていい』と答えると、ルーシーさんは面食らった。
目に滲んでいた涙は奥へ引っ込み、ズザザザザと後ろに仰け反る。

「と、友達……!?誰と誰が!?」

「私とルーシーさんですが……違いましたか?」

 頬に手を添えコテリと首を傾げる私に、ルーシーさんは目を真ん丸にした。

「ち、ちちちちちちち、違うに決まっているでしょ!だって、私達ヒロインと悪役令嬢なんだよ!?なのに、友達なんてそんなの……!」

「嫌、ですか……?」

 ルーシーさんの凄まじい拒絶反応に落ち込み、私はシュンと肩を落とす。
『仲良くなれると思ったんだけどな……』と嘆いていると、ルーシーさんが慌て出した。
居ても立ってもいられない様子でこちらに駆け寄ってきて、彼女は忙しなく手足を動かす。