なるほど。この茶番を計画したのは、聖女候補(わたし)との結婚を企む男性……いや、貴族(・・)だったのね。
他人に化ける能力まで持っている人間が、一般人に手を貸すとは思えないもの。
かなり金払いがよく、身元もしっかりしている人じゃないと応じないだろう。

 今回の依頼内容はそうだな……多分、聖女候補を攫うように見せかけ、依頼者へ引き渡すというもの。
それで依頼者は聖女候補を救った英雄となり、無事結ばれる。
何故なら、傷物となった私にまともな縁談は舞い込んでこないから。
たとえ、純潔を奪われずに済んだとしても……。
大事なのは事実じゃなくて、周囲の捉え方だから。

 『嗚呼、最悪……』と項垂れ、私は目に涙を溜める。
こちらの世界の貞操観念を考えると、これから先の人生が憂鬱でしょうがない。
『実際はただの自作自演なのに……』と不満を抱きながら、そっと目を閉じた。